Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ! 五代目!( No.41 )
  • 日時: 2015/11/15 12:34
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: IqadTsDI)

 モンスターハンター 短編小説シリーズ

 〜祖なるもの、永劫の孤独【前編】〜

 ※今回は擬人化注意です。が、苦手な人もどうぞ読んでいってください。

 人類が、古代文明と呼ばれた時代に作り上げたモノがある。
 塔。
 現代となった今では、過去の遺物や文献などが発見され、考古学者の研究対象として足を踏み入れられることがある。
 ただし、周囲の気候は不安定、かつ極めて危険なモンスターばかりが巣食う場所であるため、よほどギルドから信頼されたハンターでなくては立ち入ることすら出来ない狩り場である。
 過去には炎妃龍ナナ・テスカトリや幻獣キリンが根城としていた場所であり、希少種と分類される大型モンスターも発見されている。
 また、学者達の間では〈祖なるもの〉なる存在もこの地を訪れている
と言う酷く曖昧かついい加減な噂が立っている。





 ……が、噂とは尾ヒレが付くモノとはいえ、そこに何かがあったからこそ噂される。
 雷雲立ち込める、塔の頂。
 そこには、白く輝く龍が静かに寝息を叩いている。
 頭に生えた湾曲した四本の角。
 神々しく、雄々しい一対の翼。
 来たるべき何かを待つかのように、永劫の刻を眠り続けている。
 さて、目が覚めたのは何年ぶりか。
 何者かがこの地に足を踏み入れた。
〈祖なるもの〉は紅の眼を開き、久方に翼を広げた。
 その者の方へと肉体を向け直す。
 この地に訪れたのは、小さき者、人間であった。
 外套に身を包み、鈍色の髪は無造作に伸び放題になっている。
 人間はその金色の眼を〈祖なるもの〉の紅眼と合わせた。

「ここは、お前の地か?」

 そう、問い掛けた。
〈祖なるもの〉はしばし、考えたように黙った。

「あぁ、すまん。お前じゃヒトの言葉は分からんか」

 人間は、失念していたと言うように頬を爪で掻いた。
 思考の末、〈祖なるもの〉は全身から白光を放った。

「うぉ、眩しい」

 人間は白光から眼を守るように腕で顔を遮る。
 その白光が静まった時、人間が見たモノ。
 それは、子どものように小さなヒトだった。
 髪も肌も雪のように白く、身に付けた衣もまた澄んだような白。
 眼は赤く、大きい。
 頭身は五つほど。
 ヒトの幼き姿そのものだ。

「……これは驚いたな。龍は人の姿にもなれるのか?」

 特に驚いたような素振りもなく、人間はこの瞬間を受け入れた。
 
『……何用だ、小さき者よ』

 小さく可愛らしい桜色の唇から、奏でられた琴のように美しい声が発された。
 人間は少しばかり思考が追い付いていなかったが、目の前の幼子を〈祖なるもの〉だと感じ取った。

「用はない。ただここに来ただけさ」

 人間はその心のままに答えた。
〈祖なるもの〉は呆気を取られたように眼を開いてから、再び細めた。

『用もなくここへは来れまい。貴様も、私を滅ぼして神を越えようとする愚か者の一人だろう』

「それは心外だな……、オレは向けたい相手にしか銃も刃も向けない主義。お前には敵意を向ける理由もない」

『さようか』

 人間の言葉を咀嚼してから、〈祖なるもの〉は瞬きをした。
 瞬間、人間の四方周りに雷が落とされた。
 当てるつもりはなかったので、人間は無傷だ。

『去れ、小さき者。貴様にこの地は似つかわしくない』

「おぉ、怖い怖い。普通の人間じゃ恐怖のあまり死んでるな」

 人間は何事もなかったように〈祖なるもの〉に向き直った。
〈祖なるもの〉は小さく首をもたげた。

『成る程。貴様は他の小さき者とは違うようだ』

「あのすまんが、ひとついいか?」

 人間はそれを否定するように手を小さく挙げた。

「オレの名前は『セト』。それに、オレより小さいお前に「小さき者」呼ばわりされるのも複雑だ」

 人間、セトは〈祖なるもの〉を見下ろす。

『どうやら、本当に他の小さき者とは違うようだな、セト』

〈祖なるもの〉はセトに興味を抱いた。
 神を越えようと過ちを繰り返す愚か者達と同じではない。 

「おいおい、オレは名乗ったんだ。お前も名前を教えるのが筋だろう」

『名前、か。考えたこともない』

「じゃあ、オレが勝手につける。そうだな、運命を意味する『ミラ』でどうだ?」

『運命か。良いだろう、気に入った』

〈祖なるもの〉はミラと言う名前を気に入った。
 


 セトはどっかりと腰を降ろし、ミラも同じように座り込む。

『セト。先程は何用も無いと言ったが、その心は何だ?』

 ミラの質問に、セトは少し目を泳がせてから答えた。

「人間を辞めに来た、と言えばいいかな」

 セトの答えとは、ミラの予想を覆すものだった。
 それに対して、ミラは思わず聞き返した。

『どういうことだ?貴様は人間だろう?』

 人間としてこの世に生を受けただろうに、それを否定するとはどういうことだろうか?
 
「オレは、今この世界に呆れたんだ」

 淡々と、台本に掛かれた台詞のように、セトは続ける。

「カネのある奴が威張り散らして、カネのない奴はそれに淘汰されるだけ。戦争ばかりして、命の無駄遣いを繰り返して。オレはそんな世界を許せない」

 しかし、途中からトーンが下がり、悲しげな音色が混じる。

「だけど、オレがいくら叫ぼうと誰も耳を傾けはしない。何も変わらなかったんだ」 

『……』

「だからオレは絶望した。世界を捨てた。時が止まったここへとやって来て、お前と出会った」

 セトは寝転び、背中を石畳へと預けた。

「お前はどうだ、ミラ」

『私には絶望するような世界もなければ、何かを望むこともない。私はただ、存在するのみの存在』

 ミラもセトと同じように、背中を石畳に預ける。

「存在するのみの存在ねぇ。何だか哲学みたいだ」

 オレはそう言うのはパスだ、と冗談混じりに応じるセト。

「まぁ、かく言うオレも今は似たようなものか」

 生きる意味を見出だせなくなって、人間を辞めにここへ来た。
 
『やはり、貴様は変わっているな、セト』

「まぁな」

 よく言われてたよ、とセトは笑った。
 ミラもまた微笑を浮かべた。

『セト、貴様はこれからどうするつもりだ?』

 ミラは興味本位で、セトのこれからを訊いてみた。
 また旅へと行くのだろうか、予想していたミラだったが、セトはまたしても予想を覆す答えを出した。



「ここでミラと過ごそうかなって」