Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ! 五代目!( No.275 )
  • 日時: 2016/03/16 06:41
  • 名前: kazuhira (ID: L7ALTwt9)

クセモノ狩猟団
1話 白黒テーブルマナーT





 燃えている――そう表現して差し支えないほど暑かった。
 ドンドルマより南、レクサーラに隣合う砂漠岩地〈デデ砂漠〉はその通称を旧砂漠と言い、昼夜で寒暖の差が極端になる狩り場――生息するモンスターも、火山とはまた違った方向で過酷な環境に適応した、強力な個体であることが多い。
 そんな砂漠の酷暑に唸りながら、よりにもよってベースキャンプの日向に設置された青い支給品ボックスを漁る男性ハンター×2。
 右手=弓使い/黒い鱗が随所に見られる防具=朱色の額当て+面頬+黒いヴィッグがあしらわれたキャップ/胸元に鎖帷子を用いたレジスト/ガンナー特有の左腕を覆うガード/内股をザックリとカットされた黒いレギンス――迅竜ナルガクルガの素材をふんだんに使用し、回避性能に優れたナルガシリーズ=下位装備。
 左手=大剣使い/隣とは対照的に真っ白な防具=蒼い一本角が反り立つ頭部/申し訳程度の布面積しかないベスト=開き直ったとしか思えない高露出度でもって装備者の鍛え上げられた肉体を惜しげもなく披露/白地に黒の縞模様が走るアーム+レガース/随所にあしらわれた純白の毛――神出鬼没の古龍種、幻獣キリンから作られるキリンSシリーズ=上位装備。
「あっちぃー……マジ焼ける……」
 暑さに唸る弓使い――隣のキリンシリーズほどではないにせよそこそこ露出があり、一見他の防具より比較的軽装で通気性もよさそうなナルガシリーズ。
 だがしかし迅竜由来の黒が照りつける太陽光を吸収/おびただしい熱を生産――全身が密着型肉焼きセットに包まれたかのような熱=もはやセルフ火属性やられも同然の状態。
「あっはっは、防具選びを間違えたなぁ」
「ちくしょー、他のよりはマシだと思ったんだけどなぁ……」
 快活に笑う大剣使い/うなだれる弓使い――防具からして明らかな力量差が伺える2人が並んで支給品ボックスを漁る様は何とも言えずシュール――だがそこに格差を感じさせない打ち解けた会話。
 支給品を回収し終えた弓使いが背負っていた弓を展開――ガラスのような質感の玉虫色/X字状に張られた弦――甲虫種素材から作られたソニックボウ――叩きつけるようにして赤い強撃ビンを装填 /折り畳んで再び背へ/2人揃ってクーラードリンクを一気飲み。
「行くか」
「おう」
 出発――淡々と。
 目指す獲物は、砂の海を泳ぐ大食漢の海竜種。



 荒涼とした砂地に申し訳程度の岩場と洞窟の入り口が顔を覗かせるエリア7――熾烈な日光が容赦なく降り注ぎ、ベースキャンプの比ではない熱で大気を加熱=クーラードリンクなしでは数分ともたない過酷な環境下。
 を、何故かひとり全力で駆け回る弓使い=絶叫。
「無理無理無理! マジ死ぬ! 食われる!」
 必死の形相で叫び走る弓使いの背後――凄まじい勢いで弓使いに迫る巨大な口=今回の狩猟対象、潜口竜ハプルボッカ――普段はしまわれているはずのエラが露出/荒々しく息が漏れる鼻――怒り状態の猛烈な突進。
「ええい、くそっ!」
 このままでは振り切れない――悟った弓使い=身を翻しハプルボッカめがけて疾走/接触直前、わずかに身を捻り方向を調整/前転回避――見事にハプルボッカ脇をすり抜ける=ブシドースタイルにおけるジャスト回避の真似事――間一髪のタイミング。
 すぐに振り返って確認――鋭角的にターンし、怒涛の勢いで再び迫る大口。
「げぇっ、またかよ!」
 毒づくも今度は余裕をもって回避――だがせっかく持ち込んだ大タル爆弾を使う暇はなく。
 ソニックボウを展開/矢をつがえる/限界まで引き絞って射出――通り過ぎていくハプルボッカの背にヒット。
 交戦してからだいぶ時間が経過しているが、まだ捕獲ラインにすら追い詰められていない現状――どうすれば致命的な打撃を与えられるか、そのための隙をどう作るかを思案していると、大剣使いの声が飛んできた。
「ほら頑張れよ〜! ベルナ村の英雄様ならいけるいける〜!」
 クエスト開始から今に至るまで全くと言っていいほどの無干渉を貫いてきた大剣使い――とんでもなく無責任な応援を、絶妙に離れた安全圏から弓使いへ送りつつ自身は傍観=完全に高みの見物に収まる気満々。
「ちょっとは手伝ってくれよ!」
 ハプルボッカが前脚を踏ん張り息を吸い込む=砂吐きブレスの予備動作――弓使い=いち早く察知して安全地帯へ退避/大剣使いに叫び返す。
「お前さんの立ち回りを分析するためのクエストを俺が手伝ったら意味がないだろ〜! 大丈夫、本当に危なくなったら助けてやるから〜!」
 実に他人事と言わんばかりの無慈悲さ/あるいは幾多の修羅場を経験してきた熟練者故の余裕――いずれにせよ弓使いにとっては少々酷な言葉。
「勘弁してくれよ、もー……」
 ぶちぶち文句を垂れる弓使い――だが徐々に狩りという行為にのめり込んでいく=それまでのへっぴり腰が嘘のように持ち前の回避力を遺憾無く発揮。
 興奮し苛烈さの増したハプルボッカの猛攻を次々に掻い潜る/隙あらば一矢報いる/矢の威力を引き出すための適正距離をこまめに維持――ここにきてようやく安定してきた立ち回り。
 広いフィールドを所狭しと動き回る狩人+潜口竜=互いに譲らず一進一退の均衡を保つ。
 だが、ふとした瞬間にその均衡は崩れた。
 砂中に潜ったハプルボッカを見て次の出方を予測した弓使いがソニックボウを畳んだ直後――背後から衝撃。
「いって!?」
 予想外の襲撃に対処できるはずもなく、体勢を崩し地に膝をついてしまった。
 咄嗟に背後を確認――1匹のガレオス/よくよく見渡せば周囲には群れが――いつの間にか囲まれていた。
 マズい――そう認識したが時既に遅し。
 小さな地鳴り――気付けば弓使いの身体は高く舞い上がり、その目に空の蒼を映した次の瞬間には途方もない衝撃と共に地面に叩きつけられていた。
 無言のうちに動かなくなった弓使い――冗談にならないダメージは、彼の意識を奪い大きな隙を作るのには充分すぎた。
「こりゃいかん」
 弓使いが砂中から突き上げ攻撃を見舞われた一部始終を見た大剣使い=即座に全力疾走/ポーチから音爆弾を取り出し投擲――炸裂した高周波に敏感な聴覚を過剰に刺激されたデルクスの群れが一斉に地表へ跳び上がる/聴覚的ショックにのたうち回る。
 小型モンスターからの妨害リスクを速やかに排除してのち、動かない弓使いを庇うようにハプルボッカと対峙――突進してくるハプルボッカをキリンコルノに隠れた双眸で見据え、だがしかし閃光玉を使うでも、ガードするでも、まして弓使いを移動させるでもなく――抜刀/溜め斬りの構えへ移行=正面衝突による大打撃も辞さない迎撃体勢。
 怒れる潜口竜VSキリン大剣使い。
 全てを呑み込まんと迫り来る竜の口――期が満ちるそのときまで、大剣使いはただ睨み続けた。





あとがき:初投稿&拙い文を失礼しました。今後も更新していく予定ですのでよろしくお願いします。