Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ! 五代目!( No.268 )
  • 日時: 2016/03/05 14:22
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: LqNP2qOZ)

 モンスターハンター 〜星屑の瞬き〜

 二十八章 遠路遥々ドンドルマ

 ドンドルマ。
 険しい山々の中に切り出して作ったような街で、数多くの街の中でも最大級の規模を誇る。
 山々そのものがモンスターの侵入を阻む一方、唯一南側が平地ではあるものの、街の中で併設されている古龍観測所が24時間体制で古龍や危険なモンスターの動きを捉えており、それらの接近にはバリスタや大砲、撃龍槍などを用いて迎撃を行う。
 つい以前までは、街が壊滅的な被害を受けたために復興作業を続け、筆頭ハンター達や『我らの団』の尽力によって、かつての栄華を取り戻した。
 現在では狂竜ウイルスの研究にも大きく力を入れており、黒蝕竜ゴア・マガラ等の戦闘で入手した狂竜結晶の類いは全て、ギルドへの提出が義務付けられている。
 今日も今日とて、ドンドルマは多くの人々が行き交い、賑わう。
 そんな中、一機の飛行船がドンドルマに訪れていた。
 飛行船の着陸場に無事に着陸した。
 
「お客さま、ドンドルマにご到着ですニャ。お忘れものの無いよう、お願いしますニャ」

 飛行船のガイドを勤めるアイルーが一礼。

「ん、ありがとう」

「お勤めご苦労であーるっ」

 飛行船の中より、一組の男女が顔を出す。

「へぇ……ここが、ドンドルマか」

 男の方はシルバ。

「私も何度か来たことはあるけど、やっぱり大きさに圧倒されちゃうわけで」

 女の方はユニ。
 
「シルバくん、荷車降ろすの手伝って」

「おっし」

 シルバとユニは、飛行船の中に積んである荷車を引っ張り出して、地面に降ろす。
 なぜこの二人がドンドルマに訪れているか。
 それは、数日前に遡る。





「定期納品?」

 三日ほど前のある夜、シルバはユニに呼び出されていた。

「うん、古代林でしか取れないゼンマイとかシメジとかあるでしょ?それを、ドンドルマの方で買い取ってもらうの。所謂、交易だよ」

「なるほどな」

 龍歴院への納品が基本である特産ゼンマイや深層シメジだが、時々にドンドルマでも需要があるらしく、それらを届けるのも龍歴院所属のハンターの仕事らしい。

「それでね、明日の朝にドンドルマ行きの飛行船が出るから、それに乗るの。けっこう早い時間なんだけど、大丈夫?」

「早起きは得意な方だから大丈夫だ」





 と言うわけで、数日かけて飛行船で過ごし、今朝にドンドルマに到着したわけだ。
 シルバが荷車を押して、ユニが案内。

「(なんて言うか……)」

 荷車を押しながら、シルバは胸中で溜め息をつく。
 擦れ違いながら、主に男からの視線を感じる。
 その視線の先のほとんどは、ユニに向けられている。

「(ユニが一緒だと、目立つな……)」

 十人中、十人が認めるだろう、ユニの美貌。
 それは、このドンドルマでも同じであった。

「〜♪」

 当の本人はそんな視線など気にしていないようで、鼻歌を口ずさんでいる。 
 続いて、シルバに注がれるのは羨望と嫉妬の視線、否、死線。

「(さっさと帰りたいな……)」

 いつまでもこんな死線は浴びたくない。
 ユニの先導によって、大衆酒場へと入る。

 酒場の中は、アルコールやタバコ、肉の油や香辛料の臭いが混ざりあって、何とも言えない悪臭を漂わせている。
 荷車が酒場に入ってきて何事かと思う者もいたが、すぐに興味を失っていく。
 酒場の受付嬢の一人が、ユニに応対してくる。

「はいはーい、今日納品の龍歴院のハンターさんね。こっちこっち」

 厨房の方に案内され、そこで積み荷の納品を行うのだ。
 検品は立ち会いの元で行われ、ユニは納品書を受付嬢に渡し、数人体制で検品されていく。

「特産ゼンマイ100本、深層シメジ50本、ベルナス20本に、高原米20kg…………はい、全部納品予定通りよ」

 ユニの納品書に検品完了のサインが書き込まれ、ユニはその半券を控えとして渡す。

「いつもありがとうね。ベルナ村とか古代林の食材って珍しいから、すぐ売れて無くなっちゃうのよ」

「いえいえ、こちらこそ〜」

 ユニは慣れたものか、特に緊張もなく応じている。

「良かったら、ゆっくりしていってね。あんまり落ち着くような場所じゃないけど」





 納品を完了してから、シルバとユニはお言葉に甘えて酒場の席に着いていた。

「なぁユニ、これってオーダーとかしなくて良かったのか?」

「私みたいな龍歴院のハンターさんはお得意様だからね、格安でここの高いメニューをお任せで食べていいことになってるの」

 これが楽しみだったの、とユニは悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「それにしても、すごい場所だよなぁ。ここって……」

 何人ものハンターが依頼を受けては帰ってきて、そして飲めや食えやの騒ぎ。
 ココツト村やベルナ村では見られないほど賑やかな光景だ。

「んー、でも、私はここの料理食べたら早いとことんずらしたいけどね」

 頬杖をついて溜め息をつくユニ。

「何でだ?」

 ユニのことだから、しばらく滞在したいと言いそうなものだが、その胸中はシルバと同じだったようだ。

「だってねぇ、こう言うところにいるとね……」

 そこまでユニが言いかけたところだった。

「よぉ、そこのお嬢ちゃん。可愛いね」

「俺らとちょっと遊ばねぇか?」

 その声に振り向くと、どこからどう見てもガラの悪そうな男ハンター二人組が絡んできていた。それぞれ、ガレオス装備とコンガ装備を纏っているところ、力量そのものはシルバやユニと大差無さそうだが。
 そう言うことか、とシルバはユニの心情を察する。
 
「そこのガキなんかほっといて、よ!」

 コンガ装備の男の方はいきなりシルバを突き飛ばす。

「いでっ……!?」

 突き飛ばされたせいで席からずり落ちるシルバ。

「ちょ、ちょっと、いきなり何なの!?」

 ユニは席を立って、シルバを攻撃した男の方に非難の目を向ける。

「だから言ってるだろぉ?お嬢ちゃんにゃ、ガキなんざより俺らみたいな大人の男が似合うんだよ」

 ガレオス装備の男の方はユニを掴もうとするが、その手をはね除けたのは起き上がったシルバだった。

「いきなり人のこと突き飛ばしといて何が大人だよ、あんたら……!」

「ガキはすっこんでろ!」

 今度は腕の防具で頬を殴ろうと拳を振り上げるコンガ装備の男。
 だが、その手は止められた。

「やめなさい」

 酒場に届く凛とした少女の声。

「その方が何をしたと言うのです」

 声の方向には、深緑の鎧を纏った、桜色の髪の美少女がいたーーーーー。