『モンスターなんて存在する訳ないのに友達が狩りをしようと言うんだが…』
涙が、布団に落ちる。そしてその涙は布団に滲んでいき、やがて消える。そんなことは当たり前のことだが、今のぼくにとっては当たり前ではない。
一度作られた記憶が、すぐに消えてしまうことと同じで、悲しい気持ちになるのだ。
なぜ涙を流したのか…。それはぼくにもわからない。誰か教えてくれ。ぼくが、涙を出した理由を。
探してるんです、あれから毎日。悲しいぼくの原点を。あの日見た景色、あの日みた環境。ぼくには思い出すことは出来ない。ぼくに新しい物語は始まらない。人生の記録が今、空を渡り海を渡り、大地を渡って駆け巡る。
人生を見つけるために、ぼくはいく。
小学六年生の頃のぼくは、父親から家庭内暴力を受け、全身打撲は普通にあった。時々、他の親を羨ましく思うときや、なんで皆は暴力を振られないんだ、と思うときもあった。
子供の虐待、つまりはドメスティクバイオレンスなのであるが、ぼくは叫びも訴えもしなかった。
父をずっと信じていたから。母も、止めてくれることを祈って、助けを求めなかった。
ある日の晩、ぼくにたった一人の友達から電話がきた。彼はこう言った。「『山岸に友達止めないと殺す』って言われたから友達止めるわ。」と。
ぼくはそのとき、友達とは何がなんだかわからなくなったのである。
そして、誰一人友達がいなくなったことが事実であり、学校に行けば精神的暴力、肉体的暴力を受け、来る日も来る日もストレスが溜まった。
そしてあの晩、全てが変わった。父が読んでいた朝刊を、これまでの仕返しとして広告を抜いたのだ。
そう、この広告が全ての始まり。その広告には、大見出しで『己の狩りを、見つけだせ。モンスターハンタークロス』と書いてあったのだ。
あれから一年、ぼくはモンスターハンタークロスで、リアルで沢山の友達ができた。そして何よりも、このゲームのお陰で、父との関係を取り戻すことができたんだ。
ありがとう、モンスターハンター。
ぼくに勇気と希望、関係、未来を与えてくれた。
こんな弱く、惨めなぼくにでも。
この日以来私は友人に現実で狩りをしようと、普通に言っていた。
「お前もモンスターをハントしよう!楽しいぞ?」
E N D
この物語はフィクションです。実際の地名、人物、団体とは一切関係ありません。
Special Thanks
モンスターハンター クロス
present by ゆるふわ