Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ! 五代目!( No.266 )
  • 日時: 2016/03/03 09:48
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: mNMWf5OW)

 モンスターハンター 〜星屑の瞬き〜

 二十七章 君を想う

 それから、何度か訓練を行ってみるのだが、一度もシルバが狩技が発動することはなかった。

「ムゥ……ここまで狩技が使えないハンターがいようとはな……」

 さすがの教官もこれには苦い表情を浮かべるばかり。
 シルバも何度もドスマッカォと相対したせいで顔には疲労の色が見えていた。

「気の高まり、なんて感じないじゃないか……」

 大きく溜め息をつくシルバはツインダガーとチェーンシリーズを外して教官に返すと、どっかりとその場で座り込む。

「俺って、狩技の才能無いのかな……?」

「落ち込んじゃダメだよ、シルバくん。ほら、これ飲んで元気出して」

 ユニはシルバが訓練を行っている間に元気ドリンコを持ってきたらしく、それを差し出す。

「あぁ、ありがとうユニ」

 ビンの蓋を開けてクイッと一息で仰る。
 一息を着けてから、シルバはユニに話し掛ける。

「ユニはさ、狩技を使う時ってどんな感じなんだ?」

「んー、どんな感じって訊かれても、そう言うのあんまり意識してないかなぁ。「あ、今なら空を飛べる!」って気分になってる時に使ってる、かな?」

「空を飛べるって気分か……」

 全然分からない、と余計に肩を落とすシルバ。

「ま、まぁ、今日はなんか調子悪かったんじゃないかな?」

「うむ、誰にでも調子の出ない日もある。そんな日はさっさと寝るに限る!我輩は飲み暮れて嫌なことを忘れるが、貴様らはまだお子さまだ。お酒は二十歳になってからだぞ!」





 シルバとユニはお互い一度自宅(シルバは借家だが)に戻って、入浴を終えた頃にはすっかり日が沈みかけていた。
 タオルで髪を拭きながら、シルバはふと呟いた。

「そういや、飯まだだったな……」

 食材って何が残ってただろうか、と思い出そうとしたところで、ドアがノックされる。

「シルバくーんっ、ごはんってまだでしょー?」

 ユニだ。
 頭にタオルを乗せたまま、シルバは玄関の戸を開ける。
 湯上がりで色々と魅力が引き立てられているユニにちょっとだけ心を揺さぶられたのはなんとか隠しておく。

「ん、まだ今から作ろうかなってところだった」

「今日は、シルバくんもおかみさんのとこで食べよ?」

 彼女の言うおかみさんとは、ここベルナ村で料理屋台を営んでいるアイルーのことだ。
 実のところ、シルバは自分で作っていたため、おかみのところで食事をしたことはない。

「おかみさんのとこで?あぁ、分かった」

 



 少額の小銭を懐に忍ばせ、シルバはユニと屋台へと足を向ける。

「おや、今日は二人でお食事かニャ?」

 いつもはユニ一人だけだが、今日はシルバも一緒。
 シルバは初めてなので勝手が分からず、とりあえず着席。
 ユニは慣れたようにオーダーを頼む。

「まかない飯、二人分ねー!」

「はいはい、少々お待ちニャ」

 それだけ聞いて、おかみは調理にかかる。

「とりあえず、まかない飯でいいよね?」

「それ言う前にオーダーしたじゃないか……」

 まぁなんでもいいけどさ、と差し出されたお冷やを口にするシルバ。

「ふぅ…………」

「やっぱり、狩技が使えなかったってこと、ショックだった?」

 心なしか気持ちが沈んでいることを察知したユニは心配するように顔を覗き込む。

「それもあるんだけどさ……」

 お冷やのコップをテーブルクロスにおく。

「エール……俺が少し前まで組んでたハンターのこと、思い出してたんだ」

「あー、料理がとっても上手い、シルバくんの彼女さん」

「だから違うって」

 なんと言うか、ユニの冗談めかした会話に慣れてしまっている。

「俺のせいで大怪我して、それで療養のために実家に帰ってるんだけど……どうしてるのかなぁって」

 エールがシルバの代わりにドスガレオスの砂ブレスを受けて重傷を負ったあの瞬間は否応なく覚えている。

「会いにいかないの?」

 どうしているのか知りたいなら、会えばいいとユニは言う。

「大怪我負わせた相手に、おいそれと顔を合わせられるかよ……」

「…………」

 ユニは困ったように眉をしかめた。
 どうしているのか知りたい気持ちと、大怪我を負わせた気の悪さの板挟みだ。
 だが、ユニは優しく諭すように答えた。

「きっとその人、怒ってたりしてないよ?」

「え……?」

「大怪我するかもって分かってて、シルバくんを守ろうとしたんでしょ?だったらなおさら、会いに行ってあげて、「俺は元気だぞ」って伝えてあげなきゃ、ね」

 ユニは笑顔で頷いてくれた。

「(会っちゃいけないって思ってたのは、俺だけだったのか?)」

 エールは自分のことを悪く思っているとばかり思っていたが、ユニのその言葉で捉えていた視界が変わったように感じた。
 守ってくれたのだから、悪く思っているはずがない。

「……なんかよく分からないけど、ありがとうな、ユニ」

「いえいえ、どういたしまして」

 それから数分後、おかみからのまかない飯を頬張りながら、シルバはある決意をしていた。
 ユクモ村へ行こう。
 そして、エールともう一度会うのだとーーーーー。