Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ! 五代目!( No.160 )
  • 日時: 2016/01/17 17:03
  • 名前: かにゃえ丸 (ID: fX7fYDhF)

二部完結です
至極つまらない物だろうと思います

〜死に行く者の背中〜


萎びた木製のテーブルに開かれた古い地図。何者かによって引きちぎられた跡があり、それがどこか痛々しい。
その地図のど真ん中に、赤い印が付けられる。

「…えー、ここが我々の最終目的地であり、討伐地点でもある、竜の墓場というわけですな」

「なるほどなるほど…しかし地図が残っているとはまた不可解ですね?」

アンダーリム…っていう種類だったような…とにかく銀の縁をした眼鏡を掛けた女が言う。目標云々と語っているのは、自らは狩りに行かないにも関わらず、ハンターに無茶苦茶いうく…じゃなかった、ギルドマスターだ。

「今回のモンスターについて資料が少しだけ残っていてな…というより…えーと…なんだっけ?あのちんけな牧羊の村」

ベルナ村だよ覚えろよクソジジイが。故郷をバカにされて頭に血が上りそうになる。拳を握り締めた勢いで、身にまとったゼクスS装備の独特な衣擦れの音がする。

「ベルナ村ですね、私あの村に一度行ったことがあります、チーズフォンデュは絶品でしたなあ…」

この人はわかっている!俺の故郷の良さが!

「あ、でも、何の料理を頼んでもチーズフォンデュ形式だったのはちょっとイラっとしたかな〜…ロースハツ丼…だったっけ?あのソースもフォンデュ式で受け取らなきゃいけないのはちょっとね…」

じゃあ食うなよ。折角俺の中で株が上がりそうだったのに。プラマイ0じゃないか。

「まあその村から資料を送ってもらってね、今回の子の迎撃が出来るということだよ」

「…まあこの地図のここに行けばいいんでしょう?」

眼鏡の位置を直しながら女が言う。

「そうだな、頼むぞ、フォウ」

「任せてください!ダブルヘッドドラゴンなんちゃらなんて楽勝ですよ!」

なんちゃらってなんだ。それもう名前終わってるだろダブルヘッドドラゴンで。
ちなみに俺の名前はクロスだ。

「しかし…一人では…」

「俺!俺が行きます!」

俺が手を挙げる。

「…そうじゃな、そうしよう」

ギルドマスターも頷く。

「よし!じゃあ特殊クエストだから受注はいらないんですよね!?」

「ああ、要らんぞ、一刻を争うのに本部に連絡などしておられるか、行け行け、未来を担う若者よ」

その未来を担う若者が、死んじゃ笑い話にもなりゃしねえ。心の中で毒づきながら、俺の獲物であるたまのをの絶刀を手にした。
この世にたまのをの絶刀は、俺の所持する一本しか存在しないはずなのだが、この集会所には何故か、一本のたまのをの絶刀が神棚に祀られていた。俺は特に何も思わないまま、フォウの後を追いかけた。





結果から言うと、大敗だった。
奴は俺の斬撃にビクともしなかった。
フォウと呼ばれた女はガンナーで、俺の見たことのない銃を使っていた(彼女がサラッと零していたが、今日もよろしく、ラゼン、と言っていた気がする。)。が、ダメだった。
フォウも、俺も、二人仲良くBCに投げ出された、というわけだ。

「…キッツイなぁ…ただの頭が二つある竜なのに…なんでこんなに…」

「…龍ブレス吐いてくるとは思いませんでしたね…」

「…痛かったなあ…あのブレス…よし!へばってても仕方ない!アイルーちゃんには悪いけどもっかい行くか!」

「…ですねっ!」

俺とフォウは崖から勢いよく飛び降り、奴のエリアにもう一度侵入した。





何時間も戦っている気になってくる。
前髪が汗で額に張り付く。奴の頭が俺ごとフォウを凪ぎ払おうと地面を滑る。が、そんなもの俺には当たらない。踏みつけ、飛び、頭に一撃をお見舞いする。
だが、やはり奴の殻は硬い。まともなダメージも入れられない。
着地した時には、奴の口に、龍属性の赤い雷が走っていた。

「もうそんなの食らわないんだから!」

フォウがひょいひょいと奴の龍ブレスをかわし、貫通弾をぶち込んでいく。

「はぁっ!」

俺も負けじと、ベルナ村のハンター養成学校で仕込まれた気刃大回転斬りを叩き込む。
その瞬間だった。
奴が短く呻いた。

「フォウさんっ!チャンスですっ!」

「よっし来たぁ!」

ここぞとばかりに猛攻を仕掛けるため駆ける俺とフォウ。しかし、それは間違いだった。
奴は呻いたように見えて、ただその頭を地に隠しただけだった。
体を反転させると、勢いよくこっちに突っ込んでくる。

「うわわわわわっ!!?」

剣士であった俺は不必要に近付き過ぎていたため、横に逃げる。

「何こいつ?…変な動き」

フォウの目の前まで行くと奴は動きを止めた。ガンナーであったフォウはしめた、とばかりに、付かず離れずを守りながら弾を調合していた。
なぜだろう。俺の背筋に一筋嫌な汗が滑り、それと共に、凄まじいほどの怖気がする。気分が悪い。

「何…これ…!?」

フォウの顔が驚愕に歪む。
バンギス装備で片目は見えないが、その目の瞳孔が奴を捉えていた。

そいつは、竜じゃなかった。
これまで尾だと思っていたものはただの骨で、兜だった。
持ち上がった兜の下から出てきたのは、顔だった。
刹那、奴の眼前が赤く煌く。
俺の両足が、その光を見て動かなくなった。

「嫌…嫌よ…どうして…」

フォウは茫然自失…いや、足が動かないだけで逃げる意思はある…という様子で怯えている。

「逃げろっ!フォウさんっ!逃げろーっ!!」

その叫びは届かず、フォウは赤い光の中へ消えた。

Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ! 五代目!( No.161 )
  • 日時: 2016/01/17 06:53
  • 名前: かにゃえ丸 (ID: Z34CpDJR)

続きでございます



「…えー、今回集まってもらったのは他でもない、三度目となるが、奴の…オストガロアの討伐をお願いしたい」

「そいつイカなんだろ?泳げりゃ俺の華麗な槍さばきでみんなを引っ張ってやれたんだがな」

そう嘯くのは大型新人のトライ。ある村の危機を一人で救った伝説の男として語り継がれている。

「…まあイカに似ている、というだけでイカである保証はないのじゃがな…」

「なーじいさん、こいつ死人出してんだろ?それもハンターの」

「…あぁ…1度目の討伐作戦の時に…一人死んでいる」

質問をしたのは、ココット村出身で、片手剣使いの王。王と書いてワンと読む。

「…俺死ぬようなクエスト行きたくねえなあ」

「それでもココット出身かあ?ハンター始まりの地で生まれ育った人間のいうこととは思えねえな」

「バカ言え、俺ぁ村長とは違うんだよ、んで?死人ってどんな奴だったんだ?」

「…言わなければならないか?」

村長が喋ろうとした時、三人目がテーブルを叩く。

「そんなことはどうでもいいのよ!さっさと情報教えなさいよね!」

殺気立っている彼女の名はエフ。遠い遠い地方から来たらしく、それにしてはドンドルマなどの施設を知っている。ジャンボ村も馴染みが深いらしい。彼女の住んでいた地方は戦法まで独特で、モンスターを殺しすぎるために、養成学校に入れられ直して今に至る。言い方こそ悪いが新人の一人だ。そーりゅーこんという物が好きだったらしいが…地方がどうとかで使えないので太刀にしたらしい。

「私だけ前書きが長いのよ!何考えてんのよ!殺すわよ!」

「誰にキレてんだよ…」

「まあ良いではないか…奴は普段は二つ頭に成りすましているが、被弾していくと姿を現し、顔を見せるらしい。そして気をつけなければならないのは、赤い煌めきを放つ龍属性のブレス。大変危険らしいので、十二分に注意するように」

「…イビルジョーみたいだな」

トライがそう呟いたところで、王が待ってました、と言わんばかりにギルドマスターを問い詰める。

「で?死人の話は?俺は死にたくないからできればどんなヤツか教えてくれよ」

「…それはだな…」

その時だった。バンッ!!とデカイ音を立てて扉が開く。

「おお…!待ち侘びたぞ…!二度目の討伐作戦では無理を言ってすまなかった…!よくぞ戻ってきてくれた!」

そいつは、以前オストガロアと戦い、致命傷を受けて床に伏せていたハンターだった。

「…」

「…オイオイ、無口だな?」

「こんな頭装備してるからだろ…脱げよ、口元出さねえと喋れねえだろ?」

「…いや…やめておけ、昔とは違うんだ、その人は」

ギルドマスターがトライと王を制止する。エフは元から興味なし、と言った出で立ちで四人目を見ている。

「さて…オストガロアに殺された、一人目の話をしよう」

ギルドマスターは遠くを見つめ、昔話を始めた。

「あいつはそれなりに優秀なハンターだった。
それ故に妬まれることも多かったが、天才的な才能を得る代わりに、プライドという物、つまりは自尊心が欠けてしまった。しかしそれも長所となり得た。それがないおかげで誰と話しても自然体だったし、新人にいびることもなかった。どこまでも優秀なハンターだった。
そんなある日、極秘任務として、オストガロアの討伐が命じられた。その日のために磨き上げた武器を持って挑んだのだ。しかし…そいつの帰還した姿を…誰も見てはいない…」

「…じゃあ、そいつ生きたままオストガロアの近くにいることだってあるのか!?」

「…それはない…今のは死んだ、というのを柔らかく言っただけじゃ…」

「どうでもいいけどジジイってしょっちゅう口調ぶれるよね、カッコつけたいの?」

「エフ、あまり言うな」

ギルドマスターは少し黙ったが、無視して続けた。

「…あのハンターが死んだ、というのはアイルー達の弁による物だ…遺品もある」

「へえ、どこに?」

「あの神棚じゃ」

ギルドマスターが指差した先。あった物は、返り血が鞘にこびり付いた、黒い、たまのをの絶刀。

「…へえ…これが…」

トライが触らずに眺める。

「…予測でしかないが…龍ブレスに直撃し、肉体が砕け散ったため遺体がないと思われる…というのがアイルーの見解じゃ」

「…」

四人目が不意に、頭の装備…古代のフルフル装備を外した。

「…あの一撃は大変痛手です…バンギスを着ていたせいで…私も致命傷を受けた…」

「…龍…属性だよな?なんで生きてるんだ?」

「…あの時…逃げろ、と聞こえた気がして…必死で逃げて、当たって、身動きができなくなって…息ができなくなって…死を覚悟した時にアイルーに救われました…」

四人目は…フォウは目尻に涙を浮かべ、恐怖からであろう震えを抑えようとしていた。

「…死んだ者の名はクロス…ちんけな牧羊の村から出てきた天才少年だったよ…」

椅子に座り、野菜をもしゃもしゃ食べていたエフが飛ぶように立ち上がった。

「…行くよ、トライ、王、フォウ」

「…もう行くのか?」

「弔合戦だよ、わかんだろ!」

エフは、自分の獲物を置き、おもむろに神棚の黒い絶刀を取ると、背中に担いだ。

「行くよ!お前ら!」

エフが声を上げる。

「…ああ!ナメくさったイカは膾にしてスルメにしてやる!」

トライが嘯く。

「結局どっちにするんだい」

王が突っ込む。

「イカめし!」

フォウが答える。

またこの集会所に、猛々しい角笛の音が鳴り響く。