再び生還。
ハンターズアドベンチャー 〜エピソード ダブルクロス〜
第2話「憎悪の刃と煌めきの刃」
ガキィィィン!!
激しい金属音が鳴り響いた。
廻斗は剥ぎ取りナイフで身を守っていたが、その必要は無かった。
何故なら、廻斗の目の前に刃があったからだ。
黒に煌めく、懐かしく強大な刃が。
???「ここに見知った飛行船が止まってるもんだから、ちょいと寄ってみたら……この有り様だ。」
廻斗と妃弓花と天津は黒き刃を持った者の姿を見て驚いた。
廻斗「煌さん……!」
妃弓花「…………煌兄。」
天津「煌……!お前どこに……」
煌「話は後だ。まずはこいつを止める。」
妃弓花「……煌兄も神四天王に村を壊された事に対して何も思わないの?それとも、理不尽がどーのこーのって認めちゃうの?」
煌「……あの話を聞いたのか。」
妃弓花「答えて。返答次第では煌兄でも容赦しない。」
煌「……言うようになったな。まあ、お前が容赦しなくても俺には勝てない。」
妃弓花「……バカにするな!」
途端、妃弓花は煌に斬りかかった。煌は咄嗟に飛行船の外から出て、臨戦態勢に入った。
煌「はぁ……こうなるともう聞かねえな。力ずくで分からせるしか無いか……。」
妃弓花も後を追って飛行船の外へ出た。
妃弓花は憎悪に満ち溢れた目で煌を見る。
妃弓花「もう一度だけ聞く。煌兄も理不尽を認めたの?」
煌「……そんな世界なんだ、ここは。幾ら我儘を言ったって、現実は変わらねえ。」
煌の答えに、妃弓花は憎悪を膨らませる。
妃弓花「……皆貧弱。犯人は見つけ次第叩くのが義理。例え犯人にどんな理由があったとしても、私たちの故郷を潰したのは事実。それなのに、皆は現実は理不尽だからそれを認めろとか言う。私はそんなのは嫌だ。現実なんて、幾らでも変えてみせる。」
煌「ほう、伝説のハンターでも変えられなかった理不尽をか。……そいつは無理な話だ。」
妃弓花「ほら、無理って言った。実行する前から。煌兄達が変えられなくても、私なら出来る。いや、する。してみせる。」
煌は妃弓花の我儘さに耐え切れなくなった。
煌「……妃弓花。ちったぁ……その頭冷やせよ!」
煌は妃弓花に接近すると、神滅剣アル・ゾディアを妃弓花の右横腹に叩き込んだ。妃弓花は2メートル程吹っ飛んだ。
妃弓花「ぐっ…!」
煌「お前の気持ちだって分からねえ訳じゃねえ。だがな、時には認めなければいけない時があるんだよ!この理不尽な世界をな!」
妃弓花「……嫌だ。私は復讐する。この世界に。」
煌「いつまでも我儘が通用すると……思うなよ!」
そう言って、煌は妃弓花に怒涛の連撃を加えた。妃弓花は膝をついた。
妃弓花「がはっ…!」
煌「さあ、良く考えろ。この世界での生き方を。」
妃弓花「……こんな世界……滅びてしまえばいいのに……。」
煌は妃弓花のその言葉を聞いた途端、物凄い形相で妃弓花の胸倉を掴んだ。
妃弓花「…!」
煌「今……なんて言った……?」
妃弓花は煌の憤怒の眼差しに怯み、手に持っていたツインネイルを地面に落とす。
煌「いいか、この世界には俺たちの思い出がこれでもかと言う程ある。そんな世界を滅んで欲しいと願うお前には……心が無いのか……?」
煌は怒りと悲しみが入り混じった声で妃弓花を諭す。
煌「確かにこの世界は理不尽だ。だがな、それだけじゃない。闇があるなら光もある。辛い事があるなら楽しい事もある。だから、今のこの理不尽を乗り切れば、必ず幸せがやって来る。……相応のな。」
妃弓花はすっかり憎悪の念が抜け、煌に寄りかかる。
妃弓花「煌……兄……。」
煌は泣く妃弓花を抱き寄せ、撫でた。
煌「……お前は良く頑張ったよ。そして、これからも頑張れ。」
妃弓花「……うん。」
煌は妃弓花をおぶり、飛行船へと戻っていった。
続く
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